(1)離脱ショックはEU加盟各国に波及する
イギリス以外の国でも脱退を気軽に議論するようになるであろうし、国民投票に訴えようとする傾向は一段と強まる。EUの官僚機構には国民投票で立ち向かうのが一番なのだ、との学習効果は絶大だ。EUは国民国家の意向を最大限満たしながら合理的解決を図る能力があるのかどうか、常に問われ続けるシステムに変わる。
(2)EU離脱でも「時給400円のワープア」は解消できない?
イギリスといえば、英国立経済社会研究所によると、実質賃金が2008年から0213年にかけ、8%下がっています。失業率は5%台と低いですが、最低賃金(時給400円程度)で働くワーキングプアが数十万人(実習生、と呼ばれているそうですが)いるなど、雇用環境は良くありません。
日本も人のこと言えませんが、イギリスでこれほど長期間、実質賃金が下がり続けるのは、1964年以降で初めてとのことです。
(3)再び二分される欧州、動き出すロシア・プーチン
イギリス、ドイツ、フランスが一つの組織になることで、いがみ合いを避けることができ、実際戦後70年の平和を実現しました。
そればかりか、欧州が1つになったことで、ロシアの欧州進出も難しくなり、むしろロシアの「緩衝地帯」と見られた周辺国が、次々と西欧になびいてしまい、ロシアが政治的に重要な「緩衝地帯」を失い、孤立化に向かったほどで、「1つの大きな欧州」は着実に成果を上げてきました。
ところが、ここで英国がEUから離脱すると、本来の平和を志向した「1つの欧州」の構図が崩れてしまいます。再びアングロサクソン(英国)とゲルマン帝国(ドイツ)の対立が生じてもおかしくない図式となり、この両国にどの国が付くかで、欧州がまた二分されるリスクがあります。
(4)「自由な行き来」というメリットはもうない
このところ急激にEU支持が減っているのは、移民、難民問題の影響だ。欧州各国は国境検査を再開したり、分離壁を設けたりし始め、域内を国境検査なしで通過することを認めたシェンゲン協定は形骸化している。つまり、EUに留まっていても、自由な行き来というメリットは、少なくとも一部の人にはもうない。
(5)EU内で「一人勝ち」ドイツへの不満が高まる
欧州諸国が群れることのメリットは、発足時の理念に最もよく表れている。米ソ2大国に挟まれた欧州が、2大国に対して発言力を持つために、サイズを大きくする必要があったのだ。米国は合衆国という名の州政府の集合体、ソ連は各ソビエト共和国の連邦国で、通貨は1つ、合衆国内の州間や、連邦内の共和国間の行き来は、「基本的には」自由だった。これは、欧州ではユーロやシェンゲン協定で実現されている。
一方、ユーロ導入後のEU主要国で、失業率を劇的に低下させ、貿易黒字幅を拡大したのはドイツだけで、フランス、イタリア、スペインなどは高失業率、ユーロ不参加の英国も貿易赤字に甘んじている。英国の場合は、EUに参加しながら、ユーロ政府とは距離があるので、発言力も限定的だ。
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つまり、国家が群れると、大事なことはすべてボス大国の言いなりにならねばならないのだ。イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの苦悩も、基本的には同根だ。
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